Case study顧客企業様の事例紹介

<ゼンリン様>街の魅力を再発見 観光型MaaSアプリ「STLOCAL」の目指す姿

2024.03.25

Travel webコネクト 外部連携(GW) 電子クーポン

フォルシアが提供する商品販売プラットフォームwebコネクト。今回は、観光型MaaSにwebコネクトをご活用いただいたゼンリン様にお話をお聞きしました。

企業のWebサイト刷新ご担当の方にご参考にしていただければ幸いです。

今回お話を聞いたお客様

pic_01.JPG 株式会社ゼンリン
ビジネス企画室 MaaS担当
部長
藤尾 秀樹様

尾内 優里様

※ 所属はインタビュー当時のものになります。

ゼンリンについて

ー 貴社のご紹介をお願いします。

当社は1948年創業の会社です。地図調整業という、全国の現地調査スタッフが地図を調査してその情報をもとに地図を作成する事業をメインで行っています。中でも代表的なものは住宅地図で、全国市区町村の住宅地図のデータベースを作ってデジタルや紙で提供しています。昨今では、自動車の自動運転における3次元地図も提供しており、自動走行や先進運転支援システムに必要とされる絶対精度を実現しています。

ー 今回webコネクトを導入していただいた「STLOCAL」はどのようなサービスでしょうか?

スマートフォン一つで域内の旅の計画から、公共交通・観光施設・体験アクティビティの電子チケットの購入を可能にした観光型MaaSアプリです。街歩きを通じ、観光客の趣味嗜好に応じた情報を提供する観光MaaSとして高度化を目指しています。現在、長崎市・佐世保/西九州・五島列島でエリア展開しており、順次エリアの拡大を目指しています。先日長崎市内で開催された大規模イベント「2024長崎ランタンフェスティバル」でも公式アプリとして採用され、多くの来場客にご利用いただきました。
昔と今とでは、地図の使われ方は変わってきています。そのような中で、MaaSが位置情報を扱うという点において地図と親和性が高いため、当社としてのビジネス価値を創出できないかと、2019年頃から観光MaaS事業の準備を進めていました。元々当社は観光地図から事業をスタートした会社なので、「STLOCAL」を通じて観光MaaSを促進するということは当社にとって原点回帰の側面もあります。

pic_02.png

観光型MaaSアプリ「STLOCAL

 

ー 現在「STLOCAL」の対象エリアは長崎県ということですが、どのように決められたのでしょうか?また、今後全国へエリアを拡大する可能性はありますか?

STLOCAL」の実証開発は、地図データを使って観光周遊コースを提供したり、実際にどのように歩いたかを地図上で個人情報を特定することなく可視化したりするなど、今後の観光施策に活かしていきたいというテーマで取り組んでいました。なかなか一緒に取り組んでいける自治体がみつからない状況下で、たまたま地図研究の開発拠点がある長崎県と長崎市からお声がけいただいたことがきっかけでした。
ちょうど同じ時期、長崎大学に「情報データ科学部」という情報を扱う学部が新設されました。全国的にも地図情報と位置情報を組み合わせた情報を扱えるエンジニアの数はまだまだ少ないため、今回の取り組みを通して、産学連携で地図のエンジニアを育てていきたいというねらいもあります。
今回、長崎県からサービスを開始できたことは幸運でした。このノウハウを長崎県以外のエリアにも活かしていきたいと考えています。

pic_03.JPG

webコネクト導入の背景

ー フォルシアにお声がけいただく前の「STLOCAL」にどのようなお悩みや課題を抱えていましたか。

前述のとおり、まずは長崎県で「STLOCAL」の実証を開始することになりました。
MaaSアプリには、検索・予約・決済という3つの機能が必要だったのですが、当初は手探りで開発を進めてきました。当社には、カーナビゲーションアプリの開発実績・ノウハウはありましたが、予約やクレジットカード決済などの機能開発の経験はありませんでした。どのように進めたら良いのかがわからない中で、「まずは自分たちでやれるところまでやってみよう」と、UI/UXや管理機能は自社開発で対応を進めてきました。
そしていざ運用を開始してわかったことですが、チケットの在庫管理や細かな設定作業が非常に複雑で、いわゆる「職人技」と呼べるような領域になっていました。汎用的な運用を鑑みたときに、このままではまずいと感じていたので、ある程度機能が揃っている既存システムを利用できないものかという話が社内で出ました。

ー そのような課題感があった中で、フォルシアのことはどのようにして知ったのでしょうか?

2021年の冬の日に、長崎県で開催した「STLOCAL」アプリのお披露目会で知りました。参加していた、MaaSに知見のある業界関係者に今後のMaaS運用について相談をしたところ、「フォルシアさんを紹介しましょうか?」と声をかけていただいたことがきっかけです。20211224日、世間ではクリスマスイブの土曜日で浮足立っている日でしたので、その日のことは忘れません(笑)。

ー 当時、フォルシアにはMaaSの実績はありませんでした。導入することに不安はありませんでしたか?

MaaSに実績がなくても、旅行業界で実績があったので不安はありませんでした。
MaaSといっても、現地アクティビティやパッケージツアーなどの着地型観光商材の販売やデジタルチケットが必要になると考えていたので、そういったシステムを具備していて、かつワンストップでシステムを提供する開発会社であるという点が決め手となって採用した背景があります。フォルシアさんとしてもMaaSへのご関心もありましたので双方協力のもとMaaS分野への展開を行っていこうということになりました。

webコネクト導入後

ー 実際に導入していただいて、当初の課題は解決できましたか?

まだまだ完全に課題が解決したとは言いづらいのですが、チケット登録・在庫管理のオペレーションが大幅に低減したことと、人的ミスが減ったことは大きな進展と言えます。ユーザー視点でも、一連のチケット購入フローにおいて、わかりやすい画面になったと言えるかと思います。
また、前述の「STLOCAL」が公式アプリとして採用された「2024長崎ランタンフェスティバル」では、「飲み歩きパス(イベント期間中市内35の店舗から3店舗を選んで専用メニューの利用ができるパス)」の販売に、webコネクトの既存機能をそのまま利用することができたのは大きかったです。従来だと、開発期間を踏まえて "来年の販売を目指しましょう" となるところを、具備されている機能を活用することでチケット販売することができました。販売実現までの期間が短かったことは非常に助かりました。

pic_04.JPG

webコネクトの機能で気に入っているポイントがあれば教えてください。

一つのチケット(着地素材)に対して、複数のプランを紐づけできるようになったことは良かったです。これまでは時間指定の体験チケットを販売する際、時間枠ごとにチケット化していたため、数多くのチケットが乱立していました。
webコネクトの素材登録・検索画面を活用すると、1チケットの中で複数の時間枠を選択できるようになったため、ユーザー視点でも見やすく改善されたと思います。我々の方でも登録リソースの削減になるので、そういった点でもメリットがあると感じています。
またwebコネクト電子クーポンのチケッティングに関しても、QRコード読み込み以外の選択肢があったので、販売チケットのバリエーションを増やすことができました。QRコードを読み込んでチケッティングをするのは、場合によっては運用フローが嵩むケースもあるため、チケット販売事業者様の希望に応じてもぎりの運用方法を変えられることは良かったと思っています。

pic_05.png 時間枠を選択できる電子チケット一例

webコネクトがもっとこうなったら良いのに、という改善点があれば教えてください。

MaaS商材の一つに、バスの一日乗車券など、公共交通機関のチケットが存在しています。こういったチケットは、運転手が短時間で確認する必要があることを考えると、パッと一目把握できる画面であることが求められます。観光商材に対応している機能・画面が、公共交通のMaaSにそのまま使えないケースもあるので、そういった点は当社からフォルシアさんへフィードバックしていけたらと考えています。
UI/UXは一回で完成するものではなく、実際にユーザーに使ってもらいながら改善を重ねていくものだと考えています。引き続き、ユーザーにとって本当に使いやすいUI/UXを追求していきたく、ビジネスパートナーとして推進いただきたいです。
プラットフォーマーのフォルシアさんとしては、他顧客のサービスとの兼ね合いでどこまでをベースにするのかを決めるのは難しいかと思います。単に発注先・受注先という関係でなく、「STLOCAL」を通じてwebコネクトそのものが競争力のあるサービスに発展していってほしい。そういう視点でも応援していけたらと考えています。

pic_06.JPG

フォルシアの印象

ー 今回の開発にあたって、一番大変だったことは何ですか?

当社の場合、既存の商品があったうえでwebコネクトを導入したので、旅行商品ではないMaaS商材をwebコネクトの販売形態に合わせるという点に苦労しました。ただ、要件定義時から登録・販売方法に関して一つひとつ丁寧に向き合っていただいたおかげで、最終的には販売条件を大きく変えることなくチケット販売を実現することができました。
また開発前に「ワークショップ(※ webコネクトの現行機能をもとにフィット&ギャップを確認する期間)」を設けていただいたのは、プロジェクト開始のアプローチとして勉強になりました。毎週の検討テーマを事前に決めて議論していくという進め方の中で、要件が段々と明確になっていった点があるので、webコネクトの機能概要をある程度理解したうえで本開発に進んでいけたという感覚はあります。

ー フォルシアに対する率直な感想を教えてください。

前述のワークショップをはじめとした、いちベンダーとしての枠を超えたパートナーシップに助けられています。また、限られたスケジュールの中、複数の開発会社との連携を柔軟に対応いただけた点も感謝しています。フォルシアさんとしても初の試みでもある、アプリ内WebViewとの接続は苦労した部分の一つですが、アプリとの結合試験前に入念なテストを実施いただいたこともあり実現できたことだと思います。引き続き当社でMaaSビジネスを継続していくことを考慮すると、フォルシアさんがパートナーでいてくれてよかったです。

今後の展望

ー 今後「STLOCAL」が目指す先を教えてください。

地図とは、"ユーザーの行きたい場所が決まった中で位置をピンポイントで調べる"サービスだと思いますが、「STLOCAL」が目指したいのは「行きたい場所が決まっていなくても、ユーザーの趣味嗜好に合わせた最適な周遊コースを提案し、様々な場所に立ち寄ってもらうことのできる地図サービス」です。観光の提案を通して、世の中のMaaS・地図サービスと差別化していきたいと思っています。
また、例えば「レンタカーを追加予約すると、こんな場所にも行けますと」というアプリからの提案と共に、webコネクトを使ったレンタカー接続・予約ができることもサービスとして理想です。ユーザーが観光している中で感じる「もう一か所、楽しいところに行きたい」という気持ちに対して「こんなところがあったんだ!」と発見を与えられるのが、「STLOCAL」のあるべき姿だと思っています。その姿を実現していくためにも、フォルシアさんとは今後もぜひ密接にかかわっていければと思っています。
街を巡ることによる魅力を発見し、その街のファンを増やしていけるようなサービスを目指していきます。

ー 最後に、メッセージをお願いします。

今回、旅行業とMaaSという似て非なるサービスに対する価値観を持つ2社がお互い知見を持ち寄り取り組むことにより、双方のメリットに繋げつつプロジェクトを進めることができました。ソリューションを導入して終わりではなく、ビジネスを創っていくパートナーとして真摯に対応いただけたと思っています。このプロジェクトが地図と検索という両社の強みを生かしながら、旅行者にダイナミックな情報を提供していくための第一歩だと捉えています。
プロジェクトを進める中で意見がぶつかることもありますが、ワークショップからの開発を通じた本音で議論できるパートナーとして、今後も双方のビジネス成長につなげていければと考えています。

 

企業プロフィール
ゼンリン様


創業以来70年間培った地図作りの経験と膨大なデータの蓄積、国内外に広がるネットワークを武器に、地図情報提供の分野で圧倒的なシェアを誇っています。これまで積み重ねてきた国内屈指の地図情報をベースに、現在と未来のあらゆるニーズに目を向け、新しい「知・時空間情報」を提供する専門企業として付加価値を生み出しています。

ゼンリン「STLOCAL」Webサイト
https://stlocal.net/nagasaki